ついに、今日が養鶏場で働く初日。
いろいろ考えたけれど、面白そうと決めた仕事だから頑張ってやろう!
家から養鶏場まではちょっと距離があるから、お弁当の用意をして早めに家を出る。
田舎の山間にその養鶏場はあるので、車で走るのは気持ちが良かった。通勤時間帯にはまだ早いので走っている車はほぼいないし、信号機も少ないので、夢のようなドライブ・・・w。
養鶏場に着き、駐車場に車を置き事務所に行くと従業員らしきおばちゃん4人が椅子に座ってお茶を飲んでいた。還暦オヤジが入って行き、挨拶をすると、「派遣の人?」と一人のおばちゃんが笑顔で訊いて来た。返事をすると「入ってくれて助かったわ。頑張ってね」と言われた。
話を聞けば、なかなか人が入って来なくて大変だったらしい。助かる助かると皆が言うので、「こんなオヤジですけどね」と受け答えると、「大丈夫だから心配しないで頑張って」と言われる。
しばらくすると、養鶏場の責任者が来た。見学に来た時に会っているので簡単な挨拶を済ませた。皆からは大将と呼ばれているらしい。続いて従業員の人たちが4人やって来た。従業員はあと3人いるとのことだった。
3日出勤して1日休みというシフトなので、全員が揃うのは月に2度ほどということだった。
出社した従業員全員に紹介されてから、一人の従業員をあらためて紹介され、その従業員について仕事を教わるように指示された。その従業員は田嶋さんという人当たりの良い40歳代の人だった。
養鶏場内は広いので車で移動するようだ。それに、卵も大量に運ばなければならないのだから車は必需品だ。その養鶏場は山の中腹に作られていて、簡単に言うと3段に造成されている。事務所から少し下ると、養鶏場のほぼすべてが見渡せる。事務所が一番高いところにあり、1段降りると4つの鶏舎が並んでいる。もう1段降りると5つの鶏舎が並んでいる。谷のようになっている。そうそう、事務所の隣の20メートルほど離れたところにもう1つの建物がある。各鶏舎から集めた卵をまとめて置いておく貯卵室とのことだ。
9つある鶏舎の内2つは長さが130メートルあり、3つが80メートル、残りの4つが100メートルだそうだ。ま、いずれにしてもデカイ。今日の作業は一番下にある80メートルの鶏舎だそうだ。
一番下の段には、通路に近いところに80メートルの鶏舎が3つ並び、その奥に130メートルの鶏舎が2つ並んでいる。80メートルの鶏舎では鶏が平飼いされていて、130メートルの鶏舎では鶏はバタリーケージ飼育と言う方法で飼われているらしい。
車を鶏舎の前に置き、車を降りて目の前に傾斜を見るとますます大きく見える。田嶋さんが鶏舎の扉を開けると、鶏の鳴き声が一段と大きく聞こえ、かなりうるさく思える。鶏舎内にはいくつかの機械や机があり、その向こう側に網の扉があり、鶏がいる領域になる。機械類にはかなりの埃がかぶっている。この環境ではマスクは必須だ。
田嶋さんの説明では、なかなかやる仕事は多く、あまりゆっくり出来る時間はないとのこと。でも、慣れたらそれなりに楽は出来るそうだが・・・。
田嶋さんと鶏の領域へ。鶏の群れの中に入ると、やはり鶏の数の多さに驚く。怖さも感じた。
田嶋さんの説明では、この鶏舎にはメスばかりではなくオスも入っているそうだ。オスはテリトリーがあって、慣れていない作業員を襲ってくるそうだ。気を付けなきゃと思っている内にあるオスが飛び蹴りをして来た。けっこう痛い。ますます怖さが・・・。
だいたいのメスは鶏舎の中央に作られているネストと呼ばれる巣の中に入って卵を産むそうだ。でも、歩いていると至るところに卵が産んであり、田嶋さんはそれらを手際よくカゴに入れていった。
鶏舎内は中央のネストによって左右に分かれていて、左側から入ると突き当りを右側にUターンして運である卵を拾って来る。拾って来た卵は作業台の上で重さを計り、いくつかに仕分けする。まだよく分からない。そして、汚れを落としてトレーに並べていく。拾って来た卵の処理が終わると、ネストから繋がっているベルトコンベアーを回して、ネスト内で産み落とされた卵を回収する。その卵も重さを計り、仕分けして汚れを落とす。そして、トレーに並べて、トレーが一杯になるとビールケースくらいの大きさのケースにトレーを並べ入れる。
主な作業はこの繰り返しになる。トレーに卵を入れるまでの作業を効率よくやることが重要か。今日は、就業時間が終わるまで、ずっとこの作業を繰り返した。
他の作業もいくつかあるようだけど、その全部を田嶋さんがやっていた。途中で死んだ鶏を運んでいるのも見て、そうか生き物を扱うということはこういったこともあるんだと思った。いずれ自分もやることになるだろう。
還暦オヤジは、卵を拾い、ベルトコンベアーを回し、トレーに卵を並べてケースに入れていった。そして、何度か一杯になったケースを貯卵室に運んだ。
貯卵室には他の鶏舎からの卵も集まるので、鶏はこんなにも卵を産むのか・・・と感心した。また、人間はこんなにも卵を食べるんだとも思った。
しかし、養鶏場から帰る時にはフラフラしそうなくらいに疲れた。いつもと違う筋肉を使った感じだ。何日かしたら筋肉痛になるかもしれないな。
帰りにおばちゃんたちに「どうだった?続けられそう?」と訊かれたので、「まだよく分からないけれど大丈夫でしょう」と答えておいた。確かに3Kに近い仕事かもしれないけれど、1つの鶏舎を任されるようになれば、自分の采配で出来るし、以前に勤めていた工場のように常時そばに人がいることもないし、理不尽な嫌がらせもないだろうと思うとずいぶんと気が楽になった。